気候変動への取組みINITIATIVES FOR CLIMATE CHANGE

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同

 本投資法人の資産運用会社であるニッセイリアルティマネジメント株式会社(以下、本資産運用会社)は、気候変動問題に関して、パリ協定やIPCC等、国家レベルの枠組みで協議されているように、気候変動の進行は科学的事実であり、また、その影響は自然環境に加え、社会・産業構造に大きな変化をもたらし、本資産運用会社の経営とビジネス全体に重大な影響を与える重要な課題と認識しています。
 このような考えのもと、本資産運用会社では、2023年1月にTCFD提言への賛同の表明と国内の賛同企業による組織であるTCFDコンソーシアムへの入会を行うとともに、TCFD提言が推奨する気候変動に係る「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の項目に基づき、気候変動関連の課題がもたらすリスクと機会の特定、評価及び管理を行い、その取組みを開示しています。

TCFD

TCFD Consortium

ガバナンス

 本資産運用会社では、不動産の投資運用業務を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目的として「サステナビリティに関する基本方針」及び「サステナビリティ推進規程」を定め、その中で、サステナビリティ推進体制を構築しています。
 気候関連課題についても、サステナビリティ推進の一環とし、当該体制のもと取り組みが進められます。
詳細はこちらのページをご覧ください。

「サステナビリティ推進体制」

戦略

 本資産運用会社は、気候変動が本投資法人に与えるリスクと機会を把握し、事業への財務的影響を検証するために下記のステップに沿ってシナリオ分析を実施しています。
 ※分析対象は、本投資法人が保有する全物件としました。

シナリオの設定・各シナリオにおける世界観の構築

 シナリオ分析に当たっては、経済活動を優先し4℃気温上昇が進むシナリオ(4℃シナリオ)、及び脱炭素社会への移行を通じ気温上昇を1.5℃に抑制するシナリオ(1.5℃シナリオ)を採用しました。

4℃シナリオ

世界で公表されている政策イニシアティブ等、各国政府の現在の計画がこのまま進んだ場合の想定であり、気温が4℃程度上昇するシナリオ。洪水等の自然災害の増加等、物理リスクが高まる。
参照した移行シナリオ 参照した物理シナリオ
IEA STEPS IPCC RCP8.5

※IEA:国際エネルギー機関、  STEPS:Stated Polices Scenario、  IPCC:気候変動に関する政府間パネル

4℃シナリオの世界観

1.5℃シナリオ

厳しい気候変動に対する対策をとり、2050年までにエネルギーシステムにおける温室効果ガス排出量を実質ゼロ(ネット・ゼロ)へ移行した場合の想定であり、気温上昇を1.5℃程度に抑えるシナリオ。脱炭素社会へ移行する為のコストの増加等、移行リスクが高まる。
参照した移行シナリオ 参照した物理シナリオ
IEA NZE2050 IPCC RCP2.6

※NZE2050:Net Zero Emissions by 2050

1.5℃シナリオの世界観

気候変動リスク・機会の洗い出し・財務インパクトの分析

 4℃シナリオ、 1.5℃シナリオごとに気候変動リスク・機会を洗い出し、財務インパクトについて分析を行いました。また各リスク・機会ごとに対応策を整理、実行することにより、気候変動への戦略のレジリエンスを高めております。

不動産運用における
関連リスク・機会
財務的な影響 4℃
シナリオ
1.5℃
シナリオ
対応策
財務的影響 財務的影響
中期 長期 中期 長期
移行リスク 政治・法 カーボンプライシングによるGHG排出に対する課税・規制の強化 GHGの排出量に応じたコストの増加
  • GHG排出量について、原単位の削減目標を設定、達成状況を開示
  • 物件の省エネ改修
  • 再エネの導入
  • 資産(物件)の入替えによる環境性能の優れた物件への投資割合の向上
  • ZEH、ZEB物件の取得
既存物件に対する省エネ規制の強化 対応のための改修費用の負担増や罰金化
GHGの排出量報告・開示義務が厳格化 報告に対応するための外部業者への支払等の事業経費の増加
技術 再エネ・省エネ等の環境性能の優れた新技術の発展・普及 保有物件の設備が技術的に時代遅れになるのを防ぐための新技術導入費用の増加
  • 再エネ・省エネ技術の導入
  • 保有物件のZEH化、ZEB化
市場 気候変動への対応の遅れによる資金調達条件の悪化 環境配慮を進める投資家・レンダーからの投資・貸付の回避、資金調達コストの上昇
DBJグリーンビル認証等、環境認証取得のためのコスト増加
  • TCFD等、情報開示の充実による投資家評価の向上
  • グリーンファイナンスの推進
テナント・入居者の需要変化(より気候変動への対応が進んだ物件を選択) 環境性能の低いビルからのテナント撤退や新規テナント・入居者獲得の難航による賃料収入の減少
  • テナントニーズを踏まえた省エネ改修の実施
  • ZEH、ZEB物件の取得
  • 環境認証の取得
評判 気候変動への対応の遅れによる評判の低下 ブランド力による賃料プレミアムの減少
  • 上記、対応策の実施により、ブランド力向上
物理リスク 急性 台風等の風害による物件への被害の発生 修繕費・保険料の増加
  • ハザードツールの活用によるリスクの把握
  • 非常時の危機管理体制やBCPの強化
  • 火災保険上昇に備えた資金繰りの実施
  • 当該リスクの高い物件への投資回避
集中豪雨や近隣河川の氾濫による浸水 上記に加え、稼働率の低下等
慢性 海面上昇による低海抜物件の浸水 大規模改修(嵩上げ)費用の発生
猛暑や極寒による空調利用の増加 空調の運転・メンテナンス・修繕費用の増加
  • 高効率な空調設備の導入
  • 節電取り組みの実施
機会 資源の
効率
空調等の設備のメンテナンスやリニューアルによる高効率化 ビル管理コストの低減
  • 高効率な空調設備の導入
製品・
サービス
環境性能の優れた(GHG低排出等)設備・サービスの提供によるテナント・入居者・利用者への訴求 テナント・入居者誘致による賃料収入の増加
  • 再エネ・省エネ等の環境性能の優れた新技術の導入
市場 環境意識の高い新規投資家層の開拓 環境問題を重視する投資家への対応・訴求による資金調達量の増加、調達コストの低下
  • グリーンファイナンスの推進
回復力 風害・水害等の災害に強い不動産の需要の増加 テナント・入居者誘致による賃料収入の増加
  • ハザードツールの活用によるリスクの把握
  • 非常時の危機管理体制やBCPの強化

リスク管理

 本資産運用会社では、「リスク管理規程」に定められたリスク管理の方法として、リスク管理統括責任者であるコンプライアンス・オフィサーの指示に従い、企画総務部長がリスクを一元的に管理したリスク管理実行計画を策定し、取締役会において決議され、全社横断的にリスクの洗い出し・評価・リスクコントロールと残余リスクの把握・改善に取り組んでいます。当該リスク管理実行計画の進捗状況は、年に2回、取締役会へ報告されます。
 気候変動に関するリスクも上記の全社的なリスク管理プロセスに組み込み、サステナビリティ推進体制のもと、リスクの把握と影響度の分析、リスクコントロール策の策定および執行に取り組みます。

指標と目標

 本資産運用会社では、気候関連リスクの影響を抑えるため、指標と目標を設けてその取組みをモニタリングしています。現在気候変動問題と関連して設定している目標及びその実績はこちらのページをご覧ください。

「取組み状況」

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